建て替えかリフォーム(リノベーション)どちらを選ぶ?7つの判断ポイントを解説
自宅の改修が必要になった時、多くの人が迷うのが「建て替え」と「リフォーム(リノベーション)」のどちらを選ぶべきかということだと思います。
「家族構成が変わり、家の間取りも変えたい」「築 40 年になるが、建て替えた方が良いのか」「大地震が起きた時に耐えられるか不安」などのさまざまな悩みに対して、どのような基準で判断すれば良いのかを解説します。
<目次> 建て替えかリフォーム(リノベーション)どちらを選ぶ?7つの判断ポイントを解説
1. 「建て替え」と「リフォーム(リノベーション)」の違い
1-1. 「建て替え」とは
「建て替え」とは、建物をすべて壊して更地にし、新築と同じように一から建て直すことをいいます。
つまり、考え方としては新築を建てるのとほとんど変わりません。
新築と同じように「構造」「性能」「間取り」「デザイン」すべてを自分好みにできるというのが一番のメリットですが、実はすべての家が建て替えられるという訳ではありません。
詳しい内容は 「建て替え」or「リフォーム」、判断するときの「7つのポイント」 にてご紹介します。
1-2. 「リフォーム(リノベーション)」とは
「リフォーム」とは、今ある構造を活かしながら、修繕をしたり、改築(増築や減築)をしたりすることです。
古くなったキッチンや浴室を交換したり、壁紙を新しく貼り替えたりするなどの部分的なリフォームから、壁や床などの内装をすべて壊して一から間取りをつくる「フルリフォーム」や「スケルトンリフォーム」と呼ばれるものまで、規模はさまざまです。
また最近良く耳にする「リノベーション」とは、今ある住宅を活かしつつ、家族構成やライフスタイルにフィットした住まいにつくり変えることを指すことが多いです。
一般的には、リノベーションはリフォームの一種としてとらえられています。
リフォームで構造を補強したり、断熱の性能を上げたりすることもできますが、新築に近い性能を求めるほどコストが高くなってしまうというケースもあります。
2. 建て替え or リフォーム、判断するときの「7つのポイント」
建て替えかリフォームか、どちらかが良いとは必ずしも断定はできません。
建て替えが適しているケースも、リフォームが向いているケースもあるので、さまざまな要素から総合的に判断することが大切です。
ここからは、建て替えかリフォームどちらを選ぶべきかを判断するときの代表的なポイントを、7つご紹介します。
2-1. 法律面から判断する
法律面から「再建築不可」とみなされた場合には、建て替えができないのでリフォームを選択するしかありません。
家を建てるときのベースとなる法律は、1950年(昭和25年)につくられた建築基準法という法律です。建築基準法はこれまで毎年のように何度も改正されています。
建て替えの場合には、最新の建築基準法に合わせて家を建てなければなりません。建物が建てられた当初に比べ、今では厳しい基準が定められている可能性もあり、思った通りには建て替えられないケースもあるので注意が必要です。
ここからは、建て替えを検討するときに特に気をつけるべき法律の例をピックアップして説明します。
(1)「接道義務」:広い道路に接しないといけない
建築基準法には「接道義務」というものがあり、「建物を建てる際には少なくとも一面が幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない」ということが定められています。
これは消防車や救急車などの緊急車両が、緊急時に入れるようにするためです。
この条件を満たしていない敷地は「接道していない」とみなされ、建物を新築することができません。
接道義務が定められた1950年より前に建てられた家の場合、法律ができたことにより「再建築不可」とみなされ、建て替えられなくなるということが起こってしまうこともあるのです。
ただし例外として、道路幅が4m以下でも有効な道路としてみなされる場合もあり、道路の種類は自治体にて確認することができます。
(2)「セットバック」:狭い道路の場合は離して建てないといけない
道路幅が4m未満の場合には、建物を道路より後退(セットバック)して建てなければならないというルールもあります。
「道路の中心から2m離れた位置が道路境界線である」ことが建築基準法で決められており、道路境界線を超えて建物を建てることはできないからです。
古い市街地には、建築基準法の道路に全く接していない(例えば幅員3mの道路にしか接していない)敷地や、周囲を宅地に囲まれ、実際に道路に出入りできる部分の幅が2m満たない敷地(旗竿敷地)が存在していることがよくあります。
自分の家は建て替えても問題ないかどうかや、建て替えた場合にセットバックが必要かどうかを知りたい方は、お住まいの自治体や専門家に相談してみてください。
(3)「建ぺい率と容積率」:今の家より小さくなるかも
そのほかにも、建ぺい率や容積率が新たに定められていたり、家が建った当初から変わっているケースもあります。その場合、建て替える家は今の家の大きさよりも小さくしか建てられない可能性があるので、注意が必要です。
(建ぺい率・容積率については、こちらのページ にて解説しています)
一方で、リフォームの場合は新築とは違い、基本的には基礎や構造を残したままの改修工事となるため、その家が建てられた当時の法律を満たしていれば問題ありません。
法律面から建て替えが難しい場合でも、リフォームであれば解決できるケースもあるのでご安心ください。
2-2. 築年数から判断する
「築40年の家はリフォーム可能?」「築30年経ったけれど建て替えた方が良いのか?」という疑問を耳にすることがあります。旧耐震基準・新耐震基準どちらの時期に建てられた住宅であるかがとても大切な分かれ道です。
結論から言えば、1982年以前に建てられた「旧耐震基準」の住宅である場合は、基本的には建て替えをして耐震性を上げたり、広範囲で構造を補強したりする必要があります。
「新耐震基準」とは、1981年(昭和56年)6月1日に定められた耐震基準で、その日以降に「建築確認申請」を受けたものは「新耐震基準」の建物となります。それ以前に建てられたものは「旧耐震基準」の建物となります。
それぞれの大きな違いとしては、旧耐震基準が「震度5ぐらいの地震」を基準としているのに対し、新耐震基準は「震度6ぐらいの大きな地震」を基準としている点です。
建築確認申請を受けた日にちについては「建築確認済証」という書類に書いてあります。書類を失くしたという人は、自治体へ問い合わせてみてください。
また2000年にも木造住宅の構造について法改正が行われ、2000年6月1日以降に建てられたものはさらに耐震性能が向上しています。
使用している材料や工法、工務店の施工精度によって住宅の寿命は大きく変わりますが、まずはこれらの年代を一つの指標にしてみてください。
2-3. 性能から判断する
2. で述べた年代の話は参考にしつつ、いまの建物が実際にどのくらいの性能を持っているのかという点も踏まえて判断することも大切です。
性能が落ちてきてしまっているところが多いときは、建て替えをして根本的に直すことをおすすめします。
どんな材料を使用して建てられているのか、きちんと施工されているか、湿気やシロアリの被害を受けていないか、ということなどが、建物の耐久性に大きく関わってきます。
これらのことは建物の専門家ではない人ではわからないので、専門家によるホームインスペクションを頼むことをおすすめします。ホームインスペクション(住宅診断)では、ホームインスペクター(住宅診断士)という専門家が、第三者の立場から家を調べ、どのくらい劣化しているか、欠陥がないか、改修すべきところはないかなどのアドバイスをしてくれます。床下や設備などの見えないところまで調査をしてくれたり、お住まいの地域の地盤や、災害リスクなども調べた上でアドバイスをしてくれる業者もあります。
ホームインスペクションにかかる費用の相場は、おおよそ5~10万円です。費用はかかりますが、建て替えかリフォームかの大きな判断をする前には、ぜひ専門家に調査を頼むことをおすすめします。
2-4. 費用から判断する
建て替えまたはリフォームどちらが適しているかを費用から判断するという方法もあります。どちらが安いかはケースによるため、建て替えとリフォームがそれぞれいくらかかるのかを専門家と相談し、コストを比べて決めることをおすすめします。
建て替えの場合、家を建てられる面積や構造に何を選ぶかによっておおよその価格が決まってきます。詳しくは、 家を建てる費用はいくらかかる? のページを読んでみてください。
内部のみのフルリフォームにかかる費用は、選ぶ設備や素材のグレードによって幅がありますが、平均的な坪単価は50~80万円程度です。
それに加えて基礎や構造の耐震補強をしたり、断熱性能の高いサッシに入れ替えたり、屋根を葺き替えたりすると費用がどんどん積み重なります。改修範囲が広くなることで、結局は新築を建てるのとほとんど変わらないコストになってしまったというケースもよく聞きます。
一方でリフォームの場合は、新築に比べて申請できる補助金がたくさんあったり、減税措置を受けやすいというメリットもあります。
建て替えかリフォーム、どちらがお得だとは必ずしも言えないので、ホームインスペクションの結果や叶えたい希望と照らし合わせながら費用を比べることをおすすめします。
また建て替えのケースはもちろん、水回りを含むフルリフォームの場合も仮住まい先への引っ越しが必要となります。引っ越し費用がかかるということも想定した上で、予算計画を立てましょう。
2-5. デザイン・間取りから判断する
希望するデザインを実現するには、新築の方が適しているのか、あるいはリフォームでも叶えられるのかというところも一つの判断材料になります。
じつは、内装の仕上げについては、新築とリフォームとでは大差ありません。リフォームでは実現が難しい「立体的な空間構成」や「外形・外観」をガラリと新しくしたいという場合には、建て替えで一からデザインすることおすすめします。
例えば、地下室をつくりたい、屋上をフラットにしてテラスをつくりたい、打ちっ放しのコンクリートの外観にしたい、など今の家とは根本的なつくりを変えたい場合は新築の方が適しています。
一方で、時を重ねることで生まれる重厚感やレトロな雰囲気を残しておけるというのは、新築ではつくることができないリフォームならではの醍醐味でもあります。
《間取りをどれくらい変えられるかは、建物の構造による?》
新築では一から間取りを考えることになりますが、リフォームで間取りを大幅に変更したいという場合には特に注意が必要です。具体的には、「壊せる壁」と「壊せない壁」があることに注意しなければなりません。
在来工法や軸組工法と呼ばれる木造住宅の場合は、構造体である柱と梁以外の壁は基本的にはすべて取り払い、スケルトン状態にすることができます。柱がむき出しになることを気にしなければ、間取りは自由につくることができるということです。
一方で同じ木造でも2×4(ツーバイフォー)住宅の場合は、家の重量を壁で支える構造になっており、基本的に構造の壁の部分は壊すことができません。壊せない壁が出てくることで間取りが制限されてしまったり、壁を壊すための構造の補強が必要になるケースもあります。
鉄筋コンクリート造(RC造)の場合、柱と梁で組まれたラーメン構造の場合は問題ないのですが、「壁式構造」と呼ばれるものだと壁を壊すことができない可能性があるので注意が必要です。
壊せる壁なのか、壊せない構造壁なのかどうかは図面を見ればわかることがほとんどですが、建築家や工務店に実際に現地を見て確認をしてもらう方がより確実です。
2-6. ライフプランから判断する
今後の家族構成やライフスタイルが変わっていくことを考えて、いつのタイミングでどのようなアクションを取るのかを計画するというのも、長い目で考えたときにはおすすめです。例えば、
- この先何年住む予定か
- 子供たちに引き継ぐ予定か
- 将来的に売却を考えているか
- 二世帯で住めるようにするか
ということを整理すると、今のタイミングで建て替えるのがベストなのか、今はまだ部分的なリフォームだけにして20年後に建て替える方が良いのか、などという判断がつきやすくなるかと思います。
家族で話し合いながら、家のライフプランも考えてみましょう。
2-7. 専門家に相談する
これまでお伝えしてきたように、あなたのケースに建て替えかリフォームどちらが合っているかを判断するためには、家の調査や専門的な知識が必要となってくるケースが多いです。また家づくりをはじめてから「こんなはずじゃなかった」ということが起きないように、しっかりと情報を集めて検討することが大切です。
あとから後悔しないためにも、自分ではなかなか分からないというときは、客観的な意見をくれる専門家に相談してみましょう。
タイテルでは、家づくりの知識を持った一級建築士の建築アドバイザーが第三者の立場であなたの家づくりについてアドバイスします。家づくりについて悩んでいる人や、客観的な意見が聞きたいという人は、ぜひ タイテルの無料相談 をご利用ください。
3. 業者を選ぶときのポイント
建て替えとリフォームでは、工事で気をつけるべきポイントやノウハウが少し違います。建て替えの場合は新築に強い業者、リフォームの場合はリフォームの経験が豊富な業者を選ぶことを強くおすすめします。
ただ、業者を決める前に建て替えかリフォームかを決めきれない、ということもあるかと思います。そのような時は タイテルの建築家紹介 が便利です。
タイテルの建築アドバイザーが、新築とリフォームのどちらの経験も豊富な設計事務所を無料でご紹介します。経験豊富な建築家が、あなたの要望や家の状態を踏まえ、さまざまな視点からいろんな可能性を提案してくれるでしょう。
また建築家はいろんな強みを持った工務店とのコネクションがあり、あなたにぴったりの工務店を選んで紹介してくれます。もちろんあなたの代わりに相見積もりを取ってくれるため、費用を比較した上で新築かリフォームかを最終的に決めることもできます。
4. まとめ
建て替えかリフォーム、どちらを選ぶべきかというのは、とても複雑で難しい判断です。
この記事では、判断する7つのポイントをご説明しましたが、一番大切なのは、「家づくりの目的」と「自分たちが叶えたい暮らし」です。
悩んでしまって考えがまとまらないときは、まずはその原点に立ち戻ってみましょう。
タイテルでは、一級建築士の資格をもつ建築アドバイザーによる相談 を無料で受け付けております。もし判断に迷った場合は、ぜひお気軽にご相談ください。