【事例あり】濡れ縁とは?縁側やウッドデッキとの違い、魅力を紹介
「濡れ縁」とは、外壁の外側に突き出している床部分のこと。築年数の古い住宅や和風テイストの住宅でよく見かけるかもしれません。濡れ縁があれば、ちょっと腰を掛けて休んだり夜空を眺めながらお酒を飲んだりとリラックスタイムを楽しめます。
本記事では、暮らしをワンランクアップさせる濡れ縁の魅力について徹底解説します。あわせて、よく混同される「縁側」や「ウッドデッキ」との違いについてもわかりやすくご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
1. ホッと一息つける「濡れ縁」とは?
はじめに「濡れ縁」について解説していきます。
1-1. 読み方は「ぬれえん」
濡れ縁とは「ぬれえん」と読み、家の外壁よりも外側に飛び出している床の部分のことです。「濡縁」と表記するケースもあります。
屋根(軒)は基本的になく、あっても濡れ縁と同じ幅ほどしかないため、雨が降ると濡れてしまうことから濡れ縁と名付けられました。室内とは掃き出し窓とつなげられていることがほとんどで、おもにリビングや寝室といったリラックスできる部屋の近くに設置されています。
1-2. 縁側との違いについて
「縁側」とは完全に建物の内側にあり、掃き出し窓に面した廊下状の床部分を指します。室内にあるため窓を閉めておけば雨が降っても床が濡れることはありません。
一方で濡れ縁は、前述のとおり建物の外にある床部分のこと。このため縁側と濡れ縁の違いは、建物の外側か内側かといった設置場所といえます。
縁側だけだったり濡れ縁だけだったりと単体で設置されている住宅もあれば、縁側と濡れ縁がセットになっているつくりの住宅もあります。
1-3. ウッドデッキとの違いについて
次によく混同されてしまう「ウッドデッキ」との違いについてご説明しましょう。ウッドデッキと濡れ縁の違いは、その使い方にあります。
ウッドデッキとは、地面よりも高く設置される木製の建築物を指します。おもに掃き出し窓を通して室内とつながっており、屋外用のチェアやテーブルなどを置いてアウトドアな空間として楽しめる場所です。
複数人がくつろげるような広さがあれば、バーベキューやガーデンパーティーといった非日常も味わえます。
一方で濡れ縁はウッドデッキのように広さはなく、その場に腰掛けて読書をしたり庭を眺めたりする「ホッと一息つく場所」として活用するのが一般的です。
両方とも屋外にあり雨ざらしになる点は同じですが、広さが異なるため使い道が違うことを覚えておきましょう。
2. 濡れ縁がある暮らしの魅力
外と中を絶妙につなぐ濡れ縁にはさまざまな魅力があります。
たとえば身体は外にあるのに、室内と連続した床や屋根によって中間的な領域が完成します。これにより家の中にいるような気軽さで、外の空間を堪能できるのです。
また濡れ縁に座って、自分が丹精込めて手入れした庭を眺めたり、日向ぼっこしながら風に当たったりと自分だけのリラックス空間を楽しめます。機能性だけではなく、おしゃれな外観を手に入れられるところも嬉しいポイントでしょう。
さまざまな使い方ができる濡れ縁は、おうち時間が増えた近年注目を集めている住宅要素の一つです。
3. 濡れ縁に使われる3つの素材
濡れ縁によく使われる素材は次の3つです。
- 天然木
- アルミ
- 樹脂
3-1. スタンダードな「天然木」
濡れ縁のスタンダードな素材「天然木」は、費用がそれなりに抑えられるほか、なんと言っても木のあたたかな温もりを身近に感じられる点が魅力です。見た目もナチュラルで自然を取り入れたご自宅にピッタリでしょう。
ただし木材のため耐久性に劣ってしまうところは難点です。前述のとおり濡れ縁は雨ざらしになるため撥水性のある塗料などを塗っておかなければ、せっかくおしゃれな濡れ縁を設置してもすぐにカビたり虫が湧いたりとトラブルが発生してしまいます。
また一度塗ればよいわけではなく、定期的に塗り直したりといったメンテナンスの手間もかかります。
リアルな木の質感やあたたかみを楽しめる天然木の濡れ縁ですが、長く使うことを考えて伸張に素材を選んでいきましょう。
3-2. メンテナンス性が抜群の「アルミ」
スタイリッシュな印象になる「アルミ」の濡れ縁も人気があります。アルミは腐らない、錆びないといった特徴があるほか、軽くて丈夫なので長期間キレイに使用できるでしょう。
そんなメンテナンス性に長けたアルミ製の濡れ縁ですが、その使い勝手の良さから天然木よりも費用がかかります。加えて素材の性質上、太陽の光や気温をそのまま反射するため、真夏には裸足で歩けないほど熱くなったり、真冬は氷のように冷たくなったりする点もデメリットといえるでしょう。
とはいえ「真夏や真冬は濡れ縁に座って過ごさない」と考えている人にとっては、それほどデメリットに感じないかもしれません。
3-3. 万能選手の「樹脂木」
濡れ縁の素材として一番人気なのは「樹脂木」です。ウッドデッキにもよく使われる樹脂木は「人工木」とも呼ばれ、樹脂の中に天然木の粉末を混ぜ込んで固めた人工的な素材を指します。
天然木とアルミのいいとこ取りをした特徴をもつ樹脂木は、本来の木の温もりを感じながらもメンテナンスフリーで高い利便性を発揮します。
ただしアルミほどではありませんが、真夏になれば熱を吸収して熱くなり、真冬は冷たくなることも覚えておきましょう。また優秀な素材であることから、天然木やアルミよりも費用が高い傾向にあります。
4. 濡れ縁を設置する費用相場は「約 10〜20 万円」
濡れ縁を増設する費用相場は「約 10〜20 万円」といわれています。1平方メートルあたり12,000円ほどとされており、たとえば6畳の濡れ縁を設置する場合には約13万円の費用がかかると考えられるでしょう。
基本的に濡れ縁は建物の外側に設置するだけですので、縁側を増設するよりも安く済みます。
ただしどのような素材を使うのか、どれくらいの広さの濡れ縁にするのかによって費用相場は大きく異なるため、業者に依頼する際には必ず見積もりを取ってもらい事前に確認しておきましょう。
5. 屋根がない濡れ縁を設置する際の注意点
ここで濡れ縁を設置する場合の注意点をご紹介します。
冒頭でもご紹介したとおり、濡れ縁には屋根がありません。あったとしても濡れ縁と同じ幅ほどの軒しかないため、基本的に雨ざらし状態になります。
そのためメンテナンスを楽にしたい人は「アルミ」や「樹脂」がおすすめです。一方で素材感を大切にしたい人や、手入れをしながら愛着を持って育てていきたい人には「天然木」が適しています。
ご自身がどのような形で濡れ縁を活用していきたいのかによって、ふさわしい素材が異なることを覚えておきましょう。
また風が強い日には砂埃やゴミ、枯葉などが飛んできて汚れてしまうことも考えられます。濡れ縁を使いたいときに使えるようにキレイな状態を維持しておくためにも、室内の掃除をするついでに濡れ縁もササッと掃除しておくとよいでしょう。
6. 置くだけの濡れ縁でDIYできる?
「濡れ縁はほしいけど費用を抑えたいからDIYできないかな?」と考えている人も多いでしょう。結論からお伝えすると、注意点はありますが濡れ縁のDIYは可能です。
ホームセンターなどでは濡れ縁のDIYキッドなどが販売されています。事前に木材などがカットされていて、説明書に従って自分自身で組み立てていくのが一般的です。
ただしDIYに慣れていない人にとっては、なかなか骨の折れる作業だといえます。濡れ縁は人が歩いたり、座ったり立ったりする場所ですので、しっかりと組み立てられていなければ壊れてしまうからです。
また濡れ縁を設置する際に地面の水平をとらなければならず、土を掘って平らにならして、水平器を使い角度を確認する作業があります。水平になっていない状態で濡れ縁を設置してしまえば、ガタついたり傾いたりして使いにくい仕上がりになってしまうでしょう。
こうしたことから、ただ費用を抑えたいだけで慣れていないDIYに挑戦するのはあまりおすすめできません。
7. 自宅にマッチしたおしゃれな濡れ縁を手に入れる方法
自宅の雰囲気にマッチしたおしゃれな濡れ縁を手に入れるには、建築家(または設計事務所)に依頼することをおすすめします。
建築家は設計のプロであり、家や庭の雰囲気に合わせたデザインを考えてくれるためです。またプロの視点から、機能性や利便性が向上するアイデアも提案してくれるでしょう。
建築家に依頼すると費用が高くなると思われがちですが、決してそんなことはありません。費用についてもしっかり話し合うことで、予算内で実現できるおしゃれな濡れ縁を考案してくれます。
お客さまの希望に合わせてできる限りのデザインを行うのは、建築家たちの腕の見せ所です。長く使えるおしゃれな濡れ縁をご希望の場合には、ぜひ建築家や設計事務所に相談することも視野に入れて考えてみてください。
8. 建築家が施工したおしゃれな濡れ縁事例 10 選
最後に、建築家が施工したおしゃれな濡れ縁の実例を 10 個ご紹介します。「建築家に依頼するとどうなるの?」と気になっている人はぜひチェックしてみてくださいね。
自分の希望や条件に合った濡れ縁をデザインしてくれる建築家と話がしてみたい・紹介してみてほしいという方は、タイテルの建築家紹介 も便利です。
8-1. 色合いに統一感をもたせたシンプルな濡れ縁
ほぼ左右対称になるような住宅のデザインが目を引くこちらの二世帯住宅は、玄関周りのナチュラルな外壁と色合いを合わせた濡れ縁を設置しています。
ライトなブラウンカラーにより、家全体の雰囲気も明るくまとまっている点が魅力です。反対側の家に住んでいる家族が見えたら、お互いの濡れ縁を行き来できるようになっており家族のつながりを深く感じられます。
8-2. 自然豊かな立地に佇む山荘にピッタリの濡れ縁
こちらの山荘には天然木を使用した濡れ縁が、広々としたリビングを囲うように設計されています。
室内も木目が美しい床材をあしらっていて、リビングから濡れ縁がまるで一つの空間のように感じられるでしょう。緑が生い茂る木々を眺めながら、濡れ縁でゆったりと自分の時間を過ごせます。
8-3. 中庭を中心に家族が集まる濡れ縁
千葉県にあるこちらの住宅には、ご夫婦と2人のお子さまが住んでいます。この自宅をデザインした建築家は、お子さまでも上り下りしやすいようにとステップのついた濡れ縁を提案。
それにより腰を掛けて座ったときも足の置き場ができて、さらにリラックスした空間となりました。中庭で遊ぶ子どもたちを眺めながら、最高の休日を過ごせるような自宅といえます。
8-4. チェアを置いてテラスのように使える濡れ縁
茨城県にあるこちらの住宅では、リビング側の面に幅広い濡れ縁を設計しています。
横に長さのある濡れ縁では、そのまま腰を掛ける場所だけではなく、屋外用のチェアやテーブルを置いてテラスのように使うことも可能です。さらに庭に出るときに便利な階段もつけて、使い勝手の良い濡れ縁となりました。
8-5. スポットライトでムーディーに照らされる洗練された濡れ縁
複数の掃き出し窓を背にしたこちらの濡れ縁。庭に敷き詰められたタイルやグレーの外壁と、ナチュラルな印象を感じるウッディな濡れ縁のコントラストが美しい組み合わせです。
軒下にはシンプルなスポットライトが設置されているため、夜になると濡れ縁と庭をムーディーに照らしロマンティックで大人な時間を堪能できるでしょう。
8-6. 小ぶりな濡れ縁から眺めるプライベートな庭
こちらの住宅は丘の中腹にあり、前後に段差のある敷地に建てられました。敷地の特長を活かして北側には写真のようなプライベートガーデン、南側には見晴らしの良いテラスがある庭を設計。
スタイリッシュに斜めカットされた小ぶりの濡れ縁に腰を掛け、日頃お手入れしている美しい庭を眺めて過ごせます。
8-7. 全体的にウッディにまとめられた山荘の濡れ縁
カラマツをはじめとする木々に囲われた癒しの立地にあるこちらの山荘。大きなリビングを囲うように設計された濡れ縁は、スペースに余裕があり使い道もさまざまです。たとえばそのまま腰掛けて、森を眺めながらリラックスした時間を過ごせるでしょう。
またこちらの濡れ縁は、広々としたウッドデッキともつながったデザインになっています。
8-8. 「ブラック×ブラウン」でセンスが光るおしゃれな濡れ縁
2階にテラスを取り込んだこちらの住宅では、こじんまりとした濡れ縁が設計されました。
シックなブラックの外壁によく映える、明るいブラウンカラーの濡れ縁。色の組み合わせにセンスを感じます。加えて庭先に続くレンガの小径が、非日常へと導いてくれるような空間を演出している点も魅力的です。
8-9. 屋根のある構造を実現させた濡れ縁
こちらの住宅は農地に囲まれた穏やかな土地で、北から東まで山を一望できる美しい場所に建てられています。1階部分にガレージのようなスペースを設けることで、屋根のある濡れ縁を実現させました。
広さのある屋根により日の光も絶妙に遮られているため、子どもたちの遊び場やバーベキューをする自由スペースとしても活用できます。
8-10. 和を感じられる軒がおしゃれな濡れ縁
定年を迎えたご夫婦が暮らすこちらの住宅では、部屋と部屋をつなぐ長めの濡れ縁が設計されました。濡れ縁の前面では近所の人と気軽に交流できるスペースを設け、敷地の奥側には家庭菜園を楽しめるプライベート空間がつくられています。
屋根代わりになる軒はシックなブラックをベースに、ナチュラルな印象を与える角材を等間隔で装飾し、おしゃれな濡れ縁の空間を実現しました。
9. まとめ
設置されていなくても暮らしに支障はない濡れ縁ですが、忙しない日常生活のなかでホッと一息つける「自分だけの空間」となることから、日本家屋では人気の住宅要素です。
濡れ縁があれば、ちょっと腰を掛けて休憩したり家族との会話を楽しんだりと、リラックスタイムを堪能できます。ぜひ自宅の雰囲気にマッチした濡れ縁を設け、ワンランク上の生活を送りましょう。
またおしゃれで機能性が高い濡れ縁をご希望の場合には、「titel(タイテル)」にお気軽にご相談ください。タイテルでは一級建築士の資格をもつタイテル建築アドバイザーがご要望を伺い、注文住宅や造作家具などをご検討中のお客さまに、ぴったりの建築家をご紹介 しています。
まずは無料相談で、どのような濡れ縁をご希望なのかお聞かせください。