設計料(設計監理料)とは? 一般的な相場や算出方法を解説
家を建てるときには、工事費とは別で「設計料(設計監理料)」がかかります。設計料という言葉は聞いたことがあっても、その内容について知っている人は少ないのではないでしょうか。
ここでは、設計料(設計監理料)とは一体何にかかるお金なのかということや、設計料の一般的な相場や算出方法について解説します。家づくりを考えている人には必ず知ってもらいたい内容なので、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事のポイント:
- 設計料とは「設計料」と「監理料」を合わせた「設計監理料」のことで、一般的な相場は工事費の10~20%
- 設計料(設計監理料)は図面作成だけでなく、主に9つの専門業務に対する費用
- ハウスメーカーの設計料が安いと言われているのには、3つの理由がある
- 逆に、有名建築家や設計事務所の設計料が高いとは限らない
- 設計料だけで判断するのではなく、「自分にぴったりの家づくりができるかどうか」という視点を持つことが大切
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1. 設計料(設計監理料)とは?
設計料(設計監理料)とは、建物の「設計」と「監理」にかかるお金のことです。 設計監理料を省略して設計料と呼ばれることが多いのですが、そこには「設計料」だけでなく「監理料」も含まれています。
ここからは「設計料」と「監理料」に分けて、それぞれが何に対してかかるお金なのかを説明します。
「設計料」は5つの業務、「監理料」は4つの業務、合わせて9つの専門業務から成ります。
1-1. 設計料
設計料とは、「工事が始まる前までの、建物の設計をするのにかかる費用」のことです。設計の仕事は図面を描くことだと思われがちですが、図面を描くこと以外にもたくさんの細かい業務があります。ここでは代表的な5つの業務をご紹介します。
※ 設計会社によって細かい内訳は異なる場合があります。詳しくは設計会社へご確認ください。
条件整理
敷地の条件や建て主の要望、法的な制約、予算など、さまざまな条件を整理します。すべての条件を考慮した上で、「この敷地にはどのような建物が建てられるのか」という当たりをつけます。
土地探しから関わる場合には、「その土地を選ぶとどのようなことが可能か」「どのような制約があるか」などを検討し、建て主へアドバイスします。
役所協議
建築基準法をはじめとする法律や、地域によって定められている条例を守って設計を進めるために、必要に応じて役所へ行って協議をします。
基本設計
建て主との打ち合わせで間取りや設備、大まかな仕様を決めるために、打ち合わせの資料や図面を作成します。一般の人は、図面を見ただけではなかなか空間のイメージがつかめないこともあるので、認識を正しく共有するために、イメージパースや模型、スケッチなどを用意することもあります。
また必要に応じて、構造設計士や設備設計士に入ってもらうこともあります。
実施設計
より細かい仕様や、正確な寸法、仕上げの素材などを決めて図面に反映するのが実施設計です。基礎の図面から家具図まで、「これを見れば工事ができる」というレベルの詳細な図面を数十枚作ります。実施設計図面が完成した段階で、施工会社に本見積もりを取ります。
また無数のバリエーションの中から素材のサンプルを集め、建て主の要望や家全体の雰囲気に合うよう組み合わせを提案します。
確認申請業務
新築で家を建てるときには、多くのケースで役所や民間の審査機関に「この仕様で家を建てます」という図面を提出し、法律をきちんと満たしているかのチェックを受け、建てる許可を得る必要があります。その確認申請を行うのは建て主ですが、代理で設計者が申請手続きをするのが一般的です。
1-2. 監理料
監理料とは、「工事を問題なく進めるためにかかる費用」です。監理とは一体どのような仕事なのか、代表的な4つを紹介します。(設計会社によって細かい内訳は異なる場合があります。詳しくは設計会社へご確認ください。)
見積もり精査
施工会社から提示された工事の見積もり書を確認し、抜け漏れがないか、余分に金額が入っているところがないかをチェックします。また予算をオーバーした場合、「どのようにすれば予算内に納められるか」を検討し建て主へ提案します。
施工会社(工務店)の選定
地域や特性、工事金額などのさまざまな条件から、信頼できる施工会社を選ぶのも設計者の仕事です。
工事監理
設計図通りに工事ができているか、工程に遅れはないかなどをチェックし、建て主へ定期的に報告するのが主な仕事です。建て主の代理人として、週に1回、あるいは隔週で現場を確認します。手抜き工事や欠陥がある場合には施工会社へ指摘をしたり、現場を確認しながら細かい部分の打ち合わせをしたりします。
検査・引き渡しの立ち会い
引き渡しの前には設計検査を行い、問題なく住める状況かをくまなくチェックします。役所や審査機関よる完了検査にも立ち会い、最終の工事費の精査をした上で引き渡しをおこないます。引き渡しの後も、必要があればアフター対応にも立ち会います。
ここまでで、代表的な 9 つの専門業務についてご紹介しましたが、建築家はそれだけでなく土地探しに同行したり、家具のコーディネートを提案したりなど、ケースバイケースで柔軟に対応してくれます。
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2. 設計料(設計監理料)はいくらかかる?
設計料の算出方法は、必ずしも統一されているわけではなく、ハウスメーカーや設計事務所によりさまざまです。ここでは国で定められている設計料の基本的な算出方法や、一般的な相場について解説します。
2-1. 国土交通省が定めている算出方法
設計監理料の算出方法は、国土交通省告示第 98 号(旧告示 15 号が 2019 年に改訂されたもの)に記されています。ただしこの方法を守って設計料を決めると、トータルコストから考えると現実にはそぐわない高額な設計料となることが多いため、業務にかかる日数を少なく見積もったり、事務所独自の方法で設計料の算出方法を決めているケースもあります。
この計算方法では工事費は全く関係なく、人件費(その仕事にかかる時間)や技術料(経験値)を元に算出します。よって例えば 100 ㎡の住宅を建てるのに、1,000 万円以上の設計料がかかるということも大いに有り得る話なのです。
一方で、設計の仕事はそれだけ技術が必要で、責任の重い仕事であることを国が認めているということです。
参考までに、国で定められた設計料の算出式はこちらです。
設計監理料 = 直接人件費 + 諸経費+ 特別経費 + 技術料 + 消費税
- 直接人件費:1日あたりの人件費(資格や経験年数により規定あり)×業務にかかる日数
- 諸経費:設計事務所の経費(コピー代、交通費、通信費、消耗品費や事務所の利益などを含む)、直接人件費と同額で計算される
- 特別経費:出張費や特許使用料など、建て主の特別な依頼によってかかる経費
- 技術料:その業務において発揮される技術力や創造力、業務経験や総合企画力、情報の蓄積などの対価として支払われるもの、直接人件費の半分程度であるケースが多い
2-2. 【設計士向け】設計料を自動計算できる無料ツール
国土交通省が定めいている算出方法で計算すると、設計料は実際いくらになるのか? と気になっている設計士の方は、無料で使える アーキタッグ 設計料計算ツール で計算してみることもできます。
面積や人件費単価などの基本情報を入力すると、国土交通省のガイドラインに基づいて業務量や報酬目安を自動計算できる無料ツールです。エクセルに出力をしたり、見積書を自動作成したりする機能もあります。
「告示 98 号があることは知ってるけど、計算してみたことはない」「新しい設計案件が来たので設計料を気軽に試算してみたい」といったことがある設計士の方は、ぜひこちらの無料ツールを試してみてください。
2-3. 一般的な相場
そこで、多くの設計事務所が独自の算出方法を定めています。一般的な住宅を建てるときの設計料の相場は「工事費の10~20%」あたりです。工事費を基準として計算することで、全体の予算から工事費と設計料がそれぞれいくらかかるのかを明確にすることができます。
リフォームや小さめの住宅を建てる場合には、設計料の比率が上がるケースが一般的です。工事費が半分になるからといって、設計や監理の仕事が半分になるわけではないからです。 また事務所の方針や知名度によっても設計料の割合はさまざまなので、設計を依頼する前に確認しておきましょう。
2-4. 坪単価(面積)で定められている場合も
坪単価で設計料を算出するという方法を取っているところもあります。その場合は、「坪 8 万円~ 18 万円」あたりが相場の金額です。他にも、面積に応じて設計料の目安が定められているケースもあります。
結果的には、一般的な相場とそこまで変わらないことが多いのですが、特徴として「総工費が上がったり下がったりしても、設計料が変わらない」という点が挙げられます。
3. ハウスメーカーの設計料は安い?
ハウスメーカーの設計料は、設計事務所や工務店の設計料よりも安いと言われていますが、それには3つの理由が考えられます。規格がある程度決まっているため、設計の手間を削減できる
ハウスメーカーで家を建てる場合は、決められた規格をベースに設計を進めていくため、一からオリジナルの家を作るよりも設計にかかるコストを減らすことができます。決まった規格のなかで、自分にぴったりの家づくりができそうだという人にとっては大きなメリットです。
一方で、規格化されたものの設計を変えたり、カスタマイズやオプションをつけていくと、設計の手間、つまり設計料が追加でかかってしまいます。自分たちの要望がハウスメーカーの規格のなかでは実現できないかもしれない、規格を変える必要があるかもしれない、という人には逆に割高になってしまうでしょう。
監理のコストがほとんどかからない
ハウスメーカーで家を建てる場合は、設計と施工を同じ会社で行います。そのため見積もりの精査や施工業者の選定、工事監理など、監理にかかるコストを削ることができます。
しかしながらその一方で、ハウスメーカーで家づくりをするときには、第三者的な立ち位置の人がいないことになります。「見積もりの金額は適正なのか」「きちんと図面通りにできているか」「施工ミスや手抜き工事をしていないか」などを中立の立場で指摘してくれる人がいないため、自分でチェックをするか、ハウスメーカーを全面的に信頼するしかありません。
本体工事費や諸経費など、他の項目に分散されている
ハウスメーカーの見積もりによっては、「設計料」として書かれている金額以外にも、本体工事費や諸経費などに設計料の一部を分散した見せ方をしているところもあります。ときには「設計料」という項目すら書かれていないこともあります。設計事務所に比べて設計や監理にかかる手間が少ないとはいえ、家を設計するのにはそれなりの時間や労力が必要です。
設計料がかからないということは考えられないので、見積書の金額に設計料は含まれているのかどうかを、契約前に確認しておくことが大切です。
4. 有名建築家の設計料は高い?
相場より高いこともありますが、必ずしもそうとは言えません。むしろ建築家は、たくさん報酬を得たいというよりも、設計という仕事を心から楽しんでいる人が多いです。莫大な時間を使ってたくさんの案をつくったり、納得するまで検討を重ねて建て主へ提案してくれます。
予算が決まっている場合でも、建築家は「決められたなかで何ができるか」ということを柔軟に考えて提案してくれます。さらに実績のある建築家は、コストを抑える工夫や設計のアイディア、工務店とのコネクションをたくさん持っています。
設計料だけで判断するのではなく、総合的に考えて「自分にぴったりの家づくりができるかどうか」という視点を持つことが大切です。
5. まとめ
家を設計するには、ただ図面を描くだけではなく、たくさんの手間や労力がかかっていることがお分かりいただけたかと思います。むしろその労力を考えると、こんなに安い設計料で良いのか・・・と思ってしまうほどです。
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後悔しない家づくりをするためには、プロの意見を一度は聞いてみることがオススメです。